女医のときどきブルーな日々

ときどき下を向いてしまう30代女医のつぶやき。「コーチング」「着物」「育児」などなど。

備えのプロ。スウィングに支えられた舞台

こんにちは。

コーチングプレイス認定コーチのあおです。

 

 

花總まりさんというミュージカル女優さんが好きで、かれこれ20年ほどファンをしています。

その花總さんが主演されていた舞台「エリザベート」が先月、千秋楽を迎えました。

 

開幕前から「集大成にしたい」と言っていたお花様が、千秋楽の挨拶で「長い旅が終わりました」と彼女らしい言葉でシシィに別れを告げていたのが忘れられません。宝塚時代よりもずっと自分の言葉で多くを語る姿を見るようになりました。

 

2022年10月から2023年1月にかけて。実に5ヶ月におよぶ長期公演でした。

途中、何度も公演中止になり、帝劇と名古屋は千秋楽を迎えられず。大阪公演では主演のお花様がまさかの休演という事態もありつつ、それでも初めての千秋楽を迎え、博多座では(休演者はいたものの)一公演も落とすことなく初めて全公演を完走しています。

 

今回の公演ではスウィングとして廣瀬孝輔さんと山下麗奈さん、お二人がキャスティングされていました。

 

スウィングとはキャストに怪我や病気などがあった場合、代わりに出演するキャストのこと。どの役でも演じられるように、すべてのキャストの歌やセリフ、芝居、ダンスを覚えるという凄まじい役です。

 

 

エリザベートは主演キャストもさることながら、アンサンブルなくしては成り立たない舞台。女官や舞踏会、カフェ、ミルクの群衆など、一人で何役もこなされているのがわかります。

本役のアンサンブルでさえ自分のパートを演じられるのは相当の実力と努力が必要。そんな中で、常に誰かの休演に備えておくスウィングの役目の大切さと重みは、想像するに余りあります。

 

実際にスウィングが出演された回も何度もあったようです。

 

廣瀬さんのお名前は、大阪公演の舞台挨拶で古川さんが出されていましたね。山下さんはエリザベートの妹役(悪夢のシーン)でスウィングとして入られていたそうで、すごいの一言しかありません。

 

備えるというのは、簡単なようで難しいことです

麻酔という仕事柄「なにがあっても対応できるように備える」必要があるのですが、なにが起こるかなんて本当にわかりませえん。たとえ発生率が0.01%の合併症だとしても、起こる時は起こるのです。その0.01%の事態に対して、その場で最良の対処をするためにスキルを維持しておかなければいけない。

 

起こりうる事態なんて何千通りもあり、それぞれに対して常に動けるようにシミュレーションをして自分のコンディションを整えておく。医療現場の急変なんて無情なくらいに誰も待ってくれません。寝不足だろうが仕事が立て込んでいようがもう一人急変した患者さんがいようがお構いなし。それでも自分の仕事をまっとうする。言葉ではなんとでも言えますが、時折、その責任と果てのなさに虚しさや無力さを感じることもあります。

 

スウィングの仕事は、他のキャストよりもさらに練習時間が限られている(というかほとんど練習できないこともある)そうです。生きた人間の芝居がぶつかり合う中で、稽古でもやったことのない役を演じ切るというのは、役者として特別な技術が必要なはず。

日本ではまだ馴染みのない仕事ですが、ブロードウェイなどでは一般的であり、かつ尊敬を集める仕事であるというのも納得です。

 

 

 スウィングをされた役者さんの体験記。オファーからお稽古場の様子、そしていざスウィングとして本番の舞台に立つまでが記されています。文体は非常に淡々として読みやすいのですが、実際にその最中にいるときは大変な集中力で乗り切られていたのだろうなと感じました。

 

 

素晴らしい役者さんに支えられて、私は大好きな舞台を見届けることができました。

カンパニーの方々に、改めて感謝です。

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